昭和56年から現在に至るまでわが国の死亡原因の第1位はがんであり、国民の健康にとって重大な課題になっています。そのような現状をかんがみ平成19年4月に施行された「がん対策基本法」では、がんによる死亡数の減少とともに、全てのがん患者およびその家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上が目標に掲げられました。がん看護学分野ではそれらの目標達成に向けて、がん看護学に関する専門的な知識や技術を有する優れた医療専門職業人の養成と、その養成に貢献できる教育研究者の育成を目的としています。
本分野の主な研究テーマは、遠隔看護システムの開発です。患者のQOLを高めるケア開発を目指し、多角的な研究に取り組んでいます。これまでは、術後後遺症、人工呼吸器患者、進行がん患者を対象に、情報端末を用いた遠隔看護システムの開発を平成26年度から開始しています。退院後、患者は症状や変化をタブレットで毎日入力し、そのデータを遠隔地にいる医師や看護師がクラウド経由でデータを確認し、リハビリの継続を管理、症状や苦痛を緩和するアドバイスを送るなどの看護を行うものです。本システムは、在宅患者への支援を補完する有効な手段になると考えられます。そのほか、種々のがん患者および家族を対象としたQOL関連の調査・研究をもとに、がん罹患後のQOLを促進するケアを探求したいと考えています。